TOPに戻る

<< 前 次 >>

第1話:現れた点P

最初にそれがレーダーに捉えられた時、誰も本気にしなかった。
モニターの隅に突如現れた点。

「ノイズだろ」「またモニターの不調か」
「でなくとも鳥の群れか電磁波か、まぁすぐ消えるだろう」

管制室の一角で、冷却ファンの唸る音に紛れ、数人の職員がその映像を睨み続けている。

だがそれは消えなかった。
いくら時間が経っても、点はそこに在り続けた。
埋め込まれたかのように異様な制止を保ちつつ。

誰もが次の言葉を言い淀んでいたが、ついに一人の職員が漏らす。

「何かここに在る、巨大な・・・」

一斉にその方角に目を向けるも、窓の外には深い闇と僅かな漁火が揺れているだけだった。

時を同じくして、SNS上では闇世に浮かぶ巨大な影について噂され始める。
そして明け方には、その存在が明らかとなった。

それは球体だった。
滑らかな光沢と陰影が、完璧な曲面である事を主張している。
金属とも樹脂ともいえぬ、直径数百メートルはあろう巨大な球。

数日後、各国の科学者や軍事組織、宗教団体までもが集結する。
だが、その正体は掴めなかった。
電磁的にも物理的にも解析できず、完全に閉ざされている。
それはまるで、“ただそこに在ること”が目的であるかのように。

やがて人々は、それを“点P”と呼ぶようになる。
始まりの点。数学で見慣れた、任意の点。
しかしその点が、いったい何を意味するのか。

人類はまだ、何も知らなかった。

<< 前 次 >>

むーるがい 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

TOPに戻る