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第5話:突き進む点P

無機質で不気味で、無意味な主張。
繰り返し投げかけられる、一方的な宣告。

《これが球体、最も完璧です》

「向かってくる・・・」「た、退避を!!」

私たち警備部隊は恐怖のどん底に叩き落とされた。

警備隊とはいえ、私たちは軍人じゃない。
海岸に無許可で近づく一般人に目を光らせる、ただそれだけの役回りだった。
とても“あれ”をどうこうできる存在じゃない。

あの球体は、まるで全ての存在を無視するように、じわじわと迫ってきた。
接近するにつれ、放たれる重低音が地面を、内臓を震わせる。

──上陸、いや・・・ただ真っすぐに突き進んでくる!

海面すれすれに浮いていたあの高度を保ったまま。
ただただ真っすぐに突き進み、堤防や桟橋、陸地すら抉り、破壊し、押し退けてくる。

「なんなんだこれは・・・!」

いともたやすく、まるで砂山を突き崩すかのように。
一切速度を落とさず、意思のようなものはやはり感じられない。
ただの機構、しかし完全な破壊機構。

桟橋が砕け、陸地が裂け、建造物がなぎ倒されバラバラになっていく。

空が、地が、耳鳴りで歪む。
隊員の一人が悲鳴を上げたが、その声は直後に押し寄せた瓦礫の奔流に飲まれかき消えた。

中央付近に展開していた部隊は、皆絶叫とともに飲まれていく。

“これ”に意思はない、その殺戮と破壊に一切の選別も慈悲もなかった。

ただただ、一方的な破壊。

「まさかこのまま動き続けるというのか・・・?」

平和な街並みが、今まさに蹂躙されていく。
私たちは、何もできず呆然と立ち尽くすしかなかった。

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