無機質で不気味で、無意味な主張。 繰り返し投げかけられる、一方的な宣告。 《これが球体、最も完璧です》 「向かってくる・・・」「た、退避を!!」 私たち警備部隊は恐怖のどん底に叩き落とされた。 警備隊とはいえ、私たちは軍人じゃない。 海岸に無許可で近づく一般人に目を光らせる、ただそれだけの役回りだった。 とても“あれ”をどうこうできる存在じゃない。 あの球体は、まるで全ての存在を無視するように、じわじわと迫ってきた。 接近するにつれ、放たれる重低音が地面を、内臓を震わせる。 ──上陸、いや・・・ただ真っすぐに突き進んでくる! 海面すれすれに浮いていたあの高度を保ったまま。 ただただ真っすぐに突き進み、堤防や桟橋、陸地すら抉り、破壊し、押し退けてくる。 「なんなんだこれは・・・!」 いともたやすく、まるで砂山を突き崩すかのように。 一切速度を落とさず、意思のようなものはやはり感じられない。 ただの機構、しかし完全な破壊機構。 桟橋が砕け、陸地が裂け、建造物がなぎ倒されバラバラになっていく。 空が、地が、耳鳴りで歪む。 隊員の一人が悲鳴を上げたが、その声は直後に押し寄せた瓦礫の奔流に飲まれかき消えた。 中央付近に展開していた部隊は、皆絶叫とともに飲まれていく。 “これ”に意思はない、その殺戮と破壊に一切の選別も慈悲もなかった。 ただただ、一方的な破壊。 「まさかこのまま動き続けるというのか・・・?」 平和な街並みが、今まさに蹂躙されていく。 私たちは、何もできず呆然と立ち尽くすしかなかった。