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第9話:消えた点P

──違和感。

先程まで圧倒的な存在感を放っていたはずの“あの音”が聞こえない・・・!

ハッとして時計を確認すると、既に予定時刻を過ぎている。
額から汗がぶわりと吹き出す。

「点Pは!?」「未だ山の中に留まっているかと・・・!」
「同盟国からの攻撃もありません」「作戦は?どうなっている!?」

混乱する指揮系統をよそに、気が付けば地鳴りもぱたりと止んでいた。
日常の静けさを一気に取り戻した山々には、我々のエンジン音だけが不穏に響いている。

「鼓動も聞こえない・・・どこへ!?」

陽の光が射し始め、大地に刻みつけられた傷跡だけが徐々に浮かび上がる。

「攻撃作戦は・・・中止だ。周辺地域の警戒を──」

直後、本部からの中止命令が無線に流れる。
そこに覇気はない。
動揺、落胆、決死の攻撃作戦が空振りに終わり、その日の正午より現場調査が行われた。
しかし、点Pの行方の手がかりとなり得るものは何一つ見当たらなかった。

──点Pという圧倒的な存在の出現。
人々を恐怖に陥れた、あの宣告。
一切制止できない等速運動が始まり、障害となるものはすべて蹂躙された。

そんな事象がまるで嘘だったかのように。

点Pは、完全に“消失”していた。

引き摺られ、瓦礫に絡みついた鉄塔やビル群の鉄筋が、糸屑のように散乱している。
山間部には深い渓谷が形成され、その終点には大きく穿たれた山が墓標のように佇んでいた。

大地に刻まれた凄惨な傷跡が、それが夢ではなかった事を物語っていた──

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