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第10話:熱風に混じる

──点Pの消失から既に1か月。
まだまだ強烈な日差しが照り付ける酷暑が続いている。

攻撃作戦を主導した同盟国勢力は既に撤退し、その後は政府管理下で編成された我々調査チームに委ねられていた。

「結局、面倒なことは僕たちに丸投げですねぇ」
「まぁいいじゃないか、外国勢に調査まで介入されるほうが面倒ってもんだ」

休憩に立ち寄ったテント下で汗をぬぐいながら不満を漏らす後輩をたしなめる。

「この国の夏は地獄ですからねぇ~、あいつらも音を上げて撤退したんでしょう」

そりゃそうだ。
体温を超えた気温、湿度も高くて不快指数は毎日新記録みたいなもんだ。
防塵マスクなんかもさせられて、さらに過酷だ。

それに──いや。
汗のついでに文句までダラダラと垂れ流されるんだから、たまったもんじゃない。

「もう10分休んだら、作業再開だ。水分、取っとけよ」
「へ~い」

だらけた適当な返事にも、いつものことだと次の調査エリアへ向かう準備を整える。
調査チームは点P上陸から消失までのルート沿いに展開しているが、我々B-2班は最も被害の大きい都心部の、さらに中心地で活動していた。

ここが、最も、過酷だ。
こんな過酷な環境下で、あいつの気の抜けた適当さは、ある意味適任ではある。

「うわぁ~匂ってきた匂ってきた、とんでもねぇ~」
「・・・あぁ」

時刻は14時を回り、気温は既に38℃を超えている。
熱風に混じって絶望が香る。

ここが最も過酷な地域だ。
我々のような調査チームが本来活動するような場所ではなかった。

昨日もA班かC班に異動させてくれと涙ながらに訴えてきた仲間がいた。
一昨日もそうだったかも知れない。

「早く片づけて欲しいっすね~」
「そうだな」

──この過酷さは、暑いからではない。

「でもこの有様じゃ、探すのも大変ですね~」
「そうだな」

──全く、気の毒だが。

あいつも軽口叩いているが、よっぽど強い人間だ。
きっと何か、壮絶な過去が。

いや、暑さで少し頭がおかしくなったのか?
なんならむしろ好都合かもしれん、この俺も。

「あ~先輩、ここから移動ルートを見てください~」
「おう今行く」

ここは都心部。
ひと月前、点Pが無慈悲にも蹂躙したルートで最も被害が大きかったとされる地点。

犠牲者は5~10万人と推測され、その殆どが瓦礫に埋もれ未だ捜索できていないという──

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